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formally known?? as ANGLER ON THE HILL

あがた森魚/乗物図鑑

乗物図鑑

乗物図鑑

あがた森魚がpreヴァージンVSとしてリリースしたニューウェーヴなアルバム。未聴ですが後にヴァージンVSとして出した「乗物デラックス」はこのアルバムが下地になっているのでしょう。今のようにインターネットでマージナルな音源の情報をいくらでも手に入れることができない頃、阿木譲という人がロックマガジンという雑誌でもたらした情報というのはとても貴重で僕の好きな関西NW方面ではよく伝道師的存在、そんな大仰なものでもないかもしれないが、とにかく名前がよく出てくるんですね。その阿木譲はレーベルもやっていてヴァニティというレーベル、そこからかのAunt Sallyのアルバムも発売されたりしたのだけど、僕はその頃生まれたくらいなのでその状況に関してはよくわかりません。じゃーなんだというと、このアルバムはそのヴァニティから出たものの再発なんです。で、その阿木譲のコネクションでか、そこここでPHEW戸川純、北田昌宏、しのやんなどの名前がクレジットされているというわけで。基本的に音作りの大半はプログレ畑の人が担当しているようで、そのクレジットされている名前で想像するような尖った音作りにはなっていないんですが、PHEW&戸川純のコーラスとあがたさんのヴォーカルの絡みは両方好きな人には感涙ものなわけです。ニューウェーヴといってしまえばそれまでだけれども音の感触としてはジャーマンプログレのそれに近い気がするというか気がしたい、クラスター周辺のおならの様な気持いいシンセ音などを髣髴したい。それはPHEWが終曲の後にコニープランクなどとアルバムを作ったことなどを考えた上でそう思いたいというのもあるかもしれない。それ以上にあくまでもシンセの音をプログレッシヴなものとして*1あがたさんが取り入れたというそういう考えで聴くと恐ろしく新鮮に聴こえる、それはあがたさんの生来の昔語り的歌心とでもいうのでしょうか、それが未来を昔語りする*2というパラドックスを生じて、しかもポップに成立させているというこの奇跡、それが単に未来的に終始するニューウェーヴとは一線を画していることがとても魅力的です。

*1:まあ語義に忠実にしたいという考えなら別にニューウェーヴでもなんら問題はないのだけれど

*2:これこそがあがたさんのテーマの一つタルホロジーということなのでしょうか、ちなみにこのアルバムでは足穂の肉声もサンプリングされています