CLOSE TO THE STRAIGHT EDGE

formally known?? as ANGLER ON THE HILL

今年もこの時期になりまして。まぁ毎年毎年年間ベストって…ということをボヤいているのに何故懲りずにやるのか、それはまぁ楽しいからですよ。繰り返しになるけれどここで入れたものを今後全然聴かなくなることだって外したものが座右の名盤になるやもしれぬ、てことで。この年間ベストというものに関しては音楽性云々にはそんなに本気にならんで、現時点で今年を振り返ってみたときに、どれだけの思い入れがその、この愛しき回転する銀盤から立ち昇るか、それに尽きるわけです。音楽性も大事ですけど、それを言うと枚数を限って語るのは漏れた素晴らしい音楽たちに失礼だ。と、そう思うのです。まぁそれで年間200とかやってる人もいるけど、いや、それで、なのかどうかはわからんけど。そんなのは読むのも骨だしじゃぁ1位と200位って決めちゃったときに「1位と200位」っていう言葉、物凄く意味を持ってきますよ。言葉ってすごいですよ。比べて「1位と10位」の言葉の強度の低さ。手軽さ。今年出た新譜は40枚強くらい買いましたけど漏れた30枚が「1位と10位」を更に希薄にしてくれますんで。みんなありがとう!てな感じで今年はこの10枚です。今年はあんまり悩まなかったな。
1.Project UNDARK(Phew,Erika Kobayashi) Music by Dieter Moebius/RADIUM Girls 2011

ラジウム・ガールズ 2011

ラジウム・ガールズ 2011

実質Phewのソロ作と感じるがあくまで小林エリカとのプロジェクト。音楽はクラスターのメビウスPhewの初期のソロでメビウスとの共演も企画されていたのだけれど云々という話が実現したということも感慨深い。ラジウムガールというコンセプトをその事件などの経緯ではなくガールズの日常や独白や人となりの描写などを切り取りPhewとゲスト(アチコ、後藤まり子など)が朗読し、それをメビウスの紡ぐ不穏ながらひょうきんさも滲む電子音が覆うと引き立つその事件の暗部が現在の日本の状況もフラッシュバックして非常に重い。小林エリカの描く不機嫌な少女と蛍光黄緑に光るケースも相まって圧倒的な存在感を放っている。
2.加藤りま/harmless
ハームレス(Harmless)

ハームレス(Harmless)

exストロオズ。ストロオズは本当に大好きで。二人の女の子がアルバム1枚とEP1枚出してひっそりといなくなってしまってからも僕はその2枚の作品をずっと聴き続けてきて。去年あたりからその片割れのりまさんがソロで活動しているという情報を得たのだけれど、音源は本数限定のカセットを2本、ライヴ会場で販売していてライヴになかなか機会も合わず行けないうちに売り切れちゃったりして。そして満を持してこの音源が出たのです。ASUNA主宰の8cmCDレーベルAOTOAOから。そのアートワークと8cmという小ささがまた愛おしくて。りまさんの歌声はストロオズの頃と殆ど変わっていないのだけれど一人になった分内省的に、静かになって、それがまたそっと寄り添ってくれるような。すべてがひっそりと、気づいたら帰ってきてくれて、また静かに暮らし始める。少女は少し大人になっていて。相方の本間紫織さんも沖縄で音楽活動をしていてもめん。というユニットはCDもできたそうで、それもいずれ入手はするつもりですが何と沖縄でりまさんともめん。のジョイント小ツアーが催されたりもして、当然見に行くことはできなかったのだけれど、ストロオズが好きで本当に本当に、本当に良かった。
3.Dirty Three/Toward the Low Sun
Toward the Low Sun

Toward the Low Sun

今年は何度かヴァイオリンを持ってステージに立った。エレキヴァイオリンではなくアンプリファイしたアコースティックヴァイオリンを使うという点で参考にしたのは大好きなAndrew BirdやOwen Pallettなど。中でも僕が一番こうありたいという音を出しているのがWarren Ellis。ヴァイオリンは果たして綺麗な音を出すだけの楽器なのだろうか、ということが常に頭の中にあって、もちろん綺麗な音も素晴らしい一要素ではあるのだけれど、その弦を擦る、箱で鳴らす、という原始的な装置が発するノイズという要素がヴァイオリンのエモーションの源であると思っていて、そのノイズによるエモーションを最大限に引き出しているヴァイオリニストがWarren Ellisだと思うのだ。この7年ぶりの新作は7年という長い歳月の鬱憤を晴らすような爆発力のあるオープニングとともにこれぞDirty Threeサウンドというべきエモーションに溢れている。
4.WUJA BIN BIN/WUJA BIN BIN
WUJA BIN BIN

WUJA BIN BIN

ex.MONG HANGケイタイモの新リーダーグループ。もともとプログレ趣味のケイタイモが今度は更に大所帯にパスコアールマナーで奇妙で珍妙でグルーヴィな吹奏楽を。ヴォーカルには同じくMONG HANGのBAとon button downKARENのアチコのツイン、ホーンセクションはex.DCPRGのゴセッキーが率いている。MONG HANGの終焉が悲劇的に突然だったためケイタイモのプログレ路線の新プロジェクトを待ち望んでいたのだが予想を少し外しながらも実に気持ち良くツボを突いてきてくれたもので。パスコアールやEMIジスモンチの再発などと相俟ってもっと話題になってもいいと思うのだけれどイマイチ盛り上がりに欠けるのでもっと推していきたいところです。故アツシタナカに捧げたと思しきYACHIROCKがグッとくる。
5.THE GASLAMP KILLER/BREAKTHROUGH
Breakthrough (BFCD033)

Breakthrough (BFCD033)

Flying Lotusを筆頭に盛り上がり続けるLAビートシーンきっての変態DJ。辺境サイケなどの発掘リリースでツウ好みなレーベルFinders Keepersの音源のみを使ったMIXCDや鬼才Gonjasufiのプロデュースなどからリリース前から期待値はかなり高かった初アルバムだが、その期待に見事に答えた内容。中東寄りのサイケでスモーキーでド生なトラックを用いながら最新のビートを組み立てていく。サイケという言葉が濫用される昨今、浮遊感やレイヤードされたシンセのウワ物があれば全部サイケかよ!と当初はこういうサイケもありと思っていたものの食傷気味にスルーさせていただくことが多いが、見事に狭義のサイケ感を醸し出し、しかも違和感なくアップデートされているのは流石としか言いようがない。Flyloのアルバムも悪くなかったけど気分としては断然こっち。
6.MOTORPSYCHO and STALE STORLOKKEN/THE DEATH DEFYING UNICORN
The Death Defying Unicorn

The Death Defying Unicorn

コンスタントに作品を発表しているノルウェーが誇るロックモンスター。今回はキーボーディストとがっぷり四つにオーケストラを従えてという特別な編成で普段のハードロック、プログレ路線が更にジャズロック、シンフォ感をモリモリに、よりプログレ化しての2枚組。個人的にはシンフォプログレってただクラシックの要素を取り入れた旧態依然としたつまらんもの、プログレの中で一番プログレッシヴじゃない音楽というあまりいい印象は持っていないのだけれど共演したのがジャズオーケストラだからか、非常に有機的にモーターサイコサウンドに絡んでいく様がとてもスリリング。2枚組ながらあっという間に終わってしまう。個人的には現代のプログレとしてThe Mars VoltaのFlances the Muteが最高峰と思っているのだけれどそれに比肩する内容である。後は極私的なことだけれどこれはWOW HDで購入したのだが誤ってというかクレジット清算画面のエラーで2度注文してしまい同時に注文したうちこれだけキャンセル手続きする前に発送されてしまい、その後Twitterを通じてWOWの広報?と思しき人と英語でやり取りするというアクシデントもあり、結果どうにもならなかったのだけど(引き取ってくれたNさんに激感謝です)今となってはいい思い出。
7.THE NEW AGE STEPPERS/LOVE FOREVER
Love Forever

Love Forever

Ari Upの遺作。生前にエイドリアン・シャーウッドと制作していたものでNASとしては83年以来の新作にして最終作。ダブはもちろん、初期スリッツを彷彿させるパンクナンバーやAriのその後のソロなどの要素も取り込んだようなダンスホールレゲエのナンバーもあり、実質Ariの遺作として申し分ないものになっている。エイドリアンのエグい低音も絶好調で、というか、Ariの歌声が全然衰えていなくて、もう、惜しい人を亡くした、の一言。5年前になるがスリッツの来日を見に行った時にエイドリアンも帯同していてNASの曲(といってもカバー、というかカバーだということを最近知ったのだけど)Fade Awayも披露していてNew Age Steppersのライヴもいつか、と夢見ていたので亡くなった時は本当に悲しかったがこのNASのラストアルバムが慰みになった。ちなみにスリッツの前にAriがスーデラに来日した時のライヴ盤も日本独自企画で出たのだけどこちらも素晴らしかった。多くに嫌われ、少しに愛され。I LOVE Ari Up FOREVER!
8.Shackleton/Music For The Quiet Hour/The Drawbar Organ EPs
Music for the Quiet Hour/Drawbar Organ

Music for the Quiet Hour/Drawbar Organ

ダブステップなのかミニマルなのかドローンなのかそのどの中でも一度は括り込もうとしつつも結局はその得体の知れなさに放り出されたかあるいは属することを拒んだか。ShackletonはSKULL DISCOの頃から一応追ってはいるのだがどうも掴みどころがなく、その辺がまた魅力的でもあったわけだが。簡単に言ってしまうと先に挙げたような、ジャンルに属するような音を出してはいたのだ、ん?いたのか?たとえばVillalobosにリミックスを依頼するなど異形ながらもミニマリズムもあった。トライバルな向きからドローンへ向かう可能性もあったが結局どれにもならず。Kode9との共演作は聴いていないのだが果たして?という感じだけれど、とにかくこの最新作。さらにわけのわからないことになっている…いや、わけがわかることになっていると僕はとても感じていて、というのもたとえば僕が最近一人でやっていることにとても近い瞬間などもあり、再生中何度も大きなシンパシーを感じるのだ。僕の音楽を聴いている人はごく僅かなのでなんじゃそりゃ?なのだろうがそういうことなのだ(どういうことなのだ)。一音一音がよくわからない次元で鳴らされていて、たとえば彼の特徴でもあるトライバルなパーカッション音も、本物のパーカッションでなく、簡単に言うと偽物で、それがトライバルなフレーズから原始的手触りを取り除いて不気味な未来感を演出していたり、何というかとにかく異形のベースミュージックとしか言いようのないところまで行っている。
9.ZAZEN BOYS/すとーりーず
すとーりーず

すとーりーず

ザゼンの新譜。前作今作と聴いて、ザゼンは完成されたなと。ナンバーガールの後、という感が否めず結果3の時点で買わなくなってドラムがATSUSHIになってからまた聴き始めたので3だけ買ってないという体になっているのだが3を今聴いたらどうだろうか?まぁ僕はベースがあまり好きじゃなかったのだけど…今は…無敵の四人囃子。日本で初めてのコールドファンク、しかも世界的に見てもこれほど演奏のクオリティと出音と音楽のバランスが整っているバンドっていないんではないか?今作では更に向井の言語感覚も究極の所まで来た。徹底的に無意味で徹底的に飲んだくれで徹底的にリズミカル。じゃがたら亡き後の空白が21世紀に埋められたのだ、と大げさでも何でもなく思う。
10.fresh!/WHAT ARE YOU DOING IN THIS CONFUSION!?
What Are You Doing In This Confusion

What Are You Doing In This Confusion

活動歴8年らしいfresh!Music From The MarsDownyのメンバーなどからなるプログレッシヴなロックバンド。初めて聴いたのはノルウェーのSHINING来日時の前座で。まったく知らずに聴いてブッ飛ばされた。その会場でCD-Rも買いずっと聴いていたのだがここへ来て初アルバム。しかしそこまで精力的にライヴをしているというわけでもなさそうだし、一体どういうタイミングなんだろう?ということはまぁおいといて、メンバーのそれぞれ所属しているバンドからはあまり想像しにくいタイプの、プログレジャズロック、CUNEIFORMから出していそうな。途切れることのない勢いと熱量で畳みかけるドラム、ベース、ツインギターにサックス。プログレの影響が、なんて蓋を開けてみたらただ変拍子がちょろっとあったりするだけの奴らを全員なぎ倒していって欲しい。
とまぁ以上、以外にズボンズエンケンの新譜もあってまたこれをワンツーにしそうになったのだけどそういえばズボンズは殿堂入りさせたんだった、と。これを機にエンケンも殿堂入りさせてしまいました。いやーそれにしても書くのしんどかったなあー去年は総評形式にしたのだけど今年はまた何故か1枚1枚コメントつけてしまい、何かそういうムードだったから…もうしない!しかしまぁ今年は去年と比較して(僕は買ったCDのお店や値段や記録しているのです)かかった金額は同じなのに枚数が100枚くらい多い…マジか!中古が多かったのかな!こんなに買ってアホや、絶対聴かん。と思うけど別に聴きたくて買ってるわけじゃねーんだよ!嘘!聴きたい!もっと時間が欲しい!よいお年を!
The Sweet Passion(DVD付)

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ちゃんとやれ!えんけん!

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