CLOSE TO THE STRAIGHT EDGE

formally known?? as ANGLER ON THE HILL

NHK-FMエレクトロニカの世界2012〜渋谷慶一郎の電子音楽マトリックス〜ライヴ公開録音

カタロックも3日目最終日、まぁなんだかんだ楽しいですね。現地の天気がいいという点だけやっぱりちょっと悔しいですが。夕方渋谷へ。懐かしのNHK。以前NHK-FMのライヴビートという番組の公開録音よく見に行ってました。あの集合場所の感じとても懐かしい。今回のスタジオはそのライヴビートのスタジオとは違う、もっと広く音響もいい場所と思います。渋谷慶一郎は多分そういうことにとてもこだわる人。この番組は毎年やっていて今年で3回目ということでしたが初めて知りました。結構人集まってましたが割と年配の人が目立つ。後は外国人と若者も結構いました。石橋英子さんや飴屋法水さん、池上高志さんも来ていたようです。変わったステージ配置で、ステージの後ろ側にも客席がありその前方客席ステージ後方客席という大きな四角の隅に4つスピーカーが配置されているサラウンド仕様。まず、渋谷さんとMonaちゃんという14歳のモデルさん。前知識なしに聴いてみた感想を聞きたかったのでこの人選とのことだが、これが奏功したかどうかというと少し疑問、最初のアナウンスだとスターレスの兄貴だったようだが…まぁMonaちゃん綺麗だった&俺の前方席の最前に座っていてちょうど正面だったのでどうしても意識してしまいますわww。まず渋谷さんが自分のピアノソロ数曲を演奏。正直これはあまり面白くなかった。割とありがちな綺麗なメロディのピアノ曲というか…ただ音がいいせいかピアノの曲自体はともかくピアノのあ残響がよく聴こえてきたので残響を中心に聴いてみたら面白かった。そして今回のコラボレーターであるジム・オルークが登場。ジムのEMSのAKS(有名なアナログシンセです。ポータブル!)と渋谷さんのピアノのデュオで渋谷さんの曲を演奏。アナログシンセであるEMSとデジタルの電子音の相性が悪いということで今回渋谷さんはピアノのみのよう。EMSの演奏を後ろから見るというのはかなりおもしろかった。いい音です。続いてチェロの多井智紀さんが登場し今回のメインへ。ちなみに今回のライヴのテーマ、ジョン・ケージの晩年、ナンバーピースというそれぞれ指定した楽器の為に作曲された作品郡があり、そのソロもののOneというシリーズ*1のチェロ用の8、ジムは今回は不確定楽器担当ということで7、そして渋谷さんはピアノ用で時間関係から1と5を続けて。それをストップウォッチを見ながら互いに干渉せず同時に演奏するというもの。正味40分の演奏。ジムの不確定楽器はよくわからない箱やとぐろを巻いた金属やスネアドラムのスネアのみなどにコンタクトマイクを接しその音をエフェクトする、あるいはEMSという機材。エフェクターは足元にギガディレイともう一つ、手元にもう一つあったが確認できず。多井さんはバッハ弓を持参、さらに洗濯バサミと小型の扇風機でチェロを拡張。バッハ弓は初めて見たのだが弓の棹が湾曲した弓をさらに毛が大きく緩められており、フロック部分が可動するのでそこで張りを調節できる。その為4本の弦を同時に鳴らすことを可能にしたもの。この演奏とは関係ないのだが、ジョン・ケールヴィオラの音を聴いたことがある人ならわかると思うが、あの独特なドローンは駒の上部を平らにすることにより全ての弦を同時に鳴らしているというが、当然その場合二弦三弦を単音で鳴らすのはかなり困難になる。この弓を使えば楽器を改造しなくともああいった音が鳴らせるのではないか?バッハ弓欲しい!果たして僕に買えるようなお値段なのか、更にはオーダーメイドらしいので壁は分厚い。でも欲しいなぁ、自分で作れたらどんなにいいだろう。閑話休題。この多井さんの演奏がとても面白かった。ちなみにナンバーピースの楽譜(チェロ譜、ジムのは解読できず、渋谷さんのは見てないです)は細切れにされた五線譜が羅列されそのそれぞれの横に時間が書いてある。恐らくピアノも同じではないかと思うのだけど、この時間の間のどこかでこの音を弾けという制限があるのかないのかよくわからない、渋谷さん曰く即興と作曲されたもの真ん中というようなもの。ただし、今回の演奏ではそれらを同時に演奏するとはいえ互いの演奏に影響されないようにというのだが、なかなか難しそうだ。実際に聴いてみると本当に影響されていないのかも知る由もない。聴いていて不思議なのはある瞬間ではそれぞれ独立した演奏である瞬間は二つの楽器が融合して一つは独立していたり三つが融合していたり。またひとつの楽器が主旋律になり残りが伴奏のようになったり、とあらゆる表情が浮かんでは消えを繰り返す。それがとても奇妙で面白かった。演奏後のトークで客席にいた池上さんの言にうなずいたのが「例えば子供たちが仲良く遊んでいるように見えて実はそれぞれ違う遊びをしているということがあるがそういう状況に近い」というもの。つまり聴衆にはアンサンブルに聴こえても演者側にそういった意図が全くないというその齟齬というか。それがとても面白いのだ。なのでこれ聴いている方の面白さと演奏している方の面白さまったく違うのではないか?という面白さがある。ということで多井さんの奏法からそのテーマに至るまで大いに勉強になった。ひとつ文句をつけるとしたら会場内の冷房が効き過ぎていて震えるほどであったこと。面白かったけど寒かった。NHKの外に出ると夜の生温い空気が心地よかった。

*1:デュオ用はTwoとそれが108まであるそう