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僕の宅録、その準備は特にこれといった計画もないまま始まったように思う。
まずはヴァイオリンにピックアップを装着した。ここに至るまでがかなり長い道のりであるがこんなところで省略しても仕方ないので思いつくすべてを記す。半ば自伝的であるがその辺りすっ飛ばして読み進めてもらっても一向に構わない。
そもそも僕はヴァイオリンを始めたのが(そこから始まるのか!)7歳の頃。それから中学に入るか入らないかで地元の合奏団に入団し、それと同時にレッスンを受けることからフェイドアウトし始める。一方で高校入学と同時にバンド活動を始め、そこでベースを弾きはじめる。しばらくは合奏団ではヴァイオリンを弾き、バンドではベースを弾き、ということを特にどちらかを尊重することや干渉するようなこともなくクラシックとロックの両輪でやっていたのだが、大学に入学し、それまでのほぼコピー一辺倒のバンド活動から名前も新たにオリジナルの曲を作り演奏するようになる一方で合奏団の方は次第にフェードアウトしてしまう。理由は恐らくバイトを始め時間の余裕がなくなったせいかもしれないが当時の心境など思い出そうにも思い出せない。その新しい「穴二つ」というバンドにおいてメインで曲作りを担っていた私は通常のロックバンドのフォーマット、つまりドラムギターベースヴォーカルという編成だけでは物足りなくなりここでメンバーを一人増やし、自分はヴァイオリンを弾くことにする。ただヴァイオリンに完全にシフトしたわけではなく、というのも新たに加入したメンバーは本来はドラマーだったのでベースも弾けないこともないが、ということ、僕が作った曲には少し複雑だったり早いベースラインだったりというものが幾つかあったのでそれらに関しては僕がベースを弾き、彼にはそれ以外のリコーダーやピアニカなどを演奏してもらったり。ちなみにその時は当然アンプリファイする術もなくマイクにへばり着いて演奏していた。そんなこんなで僕はクラシック以外のことをヴァイオリンで始めた。それには例えばROVOやシカラムータ、あるいはニプリッツであったり、好きな音楽にヴァイオリンを取り入れているものが多かった為。ヴァイオリンではないが当然John Caleの影響もあったりする。しかしながらそのバンドはたった2度ライヴを行ったのちメンバーの就職などで自然と活動しなくなる(解散したつもりはないのだけれど)。何というかこれに関しては言いたいことは色々あるのだけどそれは宅録にはあまり関係ないのでここでは措く。
そんなこんなで僕は音楽活動のベースを失う。その後も何度かそのバンドの就職しなかったメンバーやバイト先の音楽好きの人たちなどとスタジオに入ったりしたのだがどうもどれも中途半端になってしまったりでぼく自身のモチベーションに繋がらず。そんな中それでも漠然と音楽を作りたいという気持ちは持ち続けていて、人とやるのは無理だろうか、とか、分身できればいいのになぁ、とか考えながら、一方で貪る様に色々な音楽を聴き続ける毎日。その中で、例えば先にも挙げたROVOのヴァイオリン奏者勝井祐二さんのソロ、あるいはUAやくるりでもプレイする内橋和久さんのソロを見たことでディレイやルーパーを多用すれば一人でも色々できるではないか、と思いBOSSのサイトを眺めたり。しかしながら勝井さんが演奏するのはエレクトリックヴァイオリン、内橋さんに至ってはギター、どちらも入手するにはちとハードルが高い。そんなことを思いながら今度はAndrew BirdやOwen Palletteのライヴを見ることになる。彼らもディレイやルーパーによって、他の楽器も使用してはいるのだがメインはヴァイオリン、しかもアコースティックにピックアップを使用している。これはもしピックアップが入手できれば僕にもできるではないか!そこで調べたところFISHMANというメーカーのV-200というピックアップはピエゾの端子を駒に挟むだけでよいとのこと、これがつまりAndrewやOwenが使っていたものと同様のものだろう(実際彼らが使っているのは、確かではないがLR Baggsというメーカーの駒に内臓されているもの、これは駒だけ交換すれば良いタイプ)。それを国内で一番安く買える某ショップで購入し装着した。長かった。とにかく自分の財力の範囲内でできることを模索し続けた結果だ。
ここからは宅録しCDを作るまでの羅列になるが、まずはBOSSのディレイ、DD-7を中古で買った。しかしながらヴァイオリン→ディレイだけでは当然音は出ない。まぁヴァイオリンそのものの音は出るのだけど。なので練習用の安価なアンプを購入。VOXのPathfinder10。思った以上にいい音がする。まぁ他のアンプを試していないのでいい音かどうかの判断をここでしていいのかということもあるが、とにかく音が出た。これで一人オーケストレーション的なことができるようになった。
録音はというと、tUnE-yArDsという女性アーティストのヴォイスレコーダーで録音した音源が4ADに見初められたというエピソードに当たり、ちゃんとした録音機材でなくヴォイスレコーダーぐらいのものでロウファイに録音するのもいいだろう、と思う。ふと自分の使用しているスマートフォンにヴォイスレコーダーのアプリが入っていることに気付く。ここでヴィオリンをディレイドしてアンプリファイした音をスマートフォンで録る、というMTRを入手するまでの録音方式が出来上がった。そうするとそれをCDにしたい、と思うようになる。スマートフォンに録音したデータをPCに移せばいいようなものだがその録音データの拡張子が着メロに使われるような聞いたことのないものでそのままではCDにはできない。色々と調べた結果デコードというものでWAVに変換すればいいということまではわかったのだがデコードが色々試しても途中で切れてしまったり、と全然上手く行かない。これは一体どうすればいいのかと頭を抱えたが、ふと、カセットやMDの音源をCDにしていた弟のことを思い出し、それについて調べる。その中で一番手っ取り早いのがケータイのヘッドフォン端子とPCのマイク端子をラインケーブルで繋ぎ、音を流してそれをPCで録音する、という方法だった。早速電機屋さんでラインケーブルを購入し繋ぎ、フリーの録音ソフトをインストールし録音してみた。できた。とても酷い音質だが聴けないことはない。全体を覆うロウファイ感が寧ろ愛おしくすら思う。そんなこんなで試行錯誤の末自分の音がCDになった。すべてはできるだけお金をかけずに音楽を作り、それを録音して聴きたい、という欲求に基づいてたどり着いたもの、こんなやり方他に誰がしている?というくらい回りくどくチープだがこれが僕のやり方。宅録とは、そういうものだろう。江森丈晃さん監修のHOMEMADEMUSICという本も非常にいいインスピレーションを与えてくれた。
先日8trackのMTRを手に入れたが、これを最初に入手してしまっていたらどうだったか、これまでの、自分でもどうやったか思い出せないような音とか、何度聴いても飽きない音楽、果たしてできていただろうか、と思う。今後もこつこつと機材を充実させていくつもりではあるがこの初めてのCDに至るまでの過程ほど苦心し興奮することってなかなかないのではないだろうか?と思うけど初心云々、とにかく色々やってみる精神で色々やってみますよ。
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