CLOSE TO THE STRAIGHT EDGE

formally known?? as ANGLER ON THE HILL

2020年のベストアルバム

冒頭でお疲れ様ですと書きそうになった(書いてる)、今紅白が始まろうとしている年の瀬も年の瀬、仕事のことが頭の片隅に張り付いて気分は晴れない

言うまでもなくMIZOUの年であったわけでそのこと自体に関しては自分がわざわざ振り返るまでもなかろうが、ここ数年新譜も殆ど買ってないしという理由で決めてなかった年間ベストというものを今年は考えて記しておいた方が(自分の為に)良いのだろうと思い数年ぶりにインターネット上に少し長めの文章を記してみます。

そもそも自分が一年でいいと思った何枚かを発表して誰の為何の為になる?という気持ちと人がどういう気持ちでやっているかしらないけれど気になる気持ちもある。気持ち気持ちと気持ち悪い。人の気持ちなんてどうでもいいけど気になる気持ち。

しかしながら、かつて日記をブログに残していた時も誰かに読んで欲しいという気持ちもありつつもやはり覚書としての機能がより重要だったわけで。敢えて自分が今年がどういう年だったかを語る必要はないけれど、自分がどうだったか、それで何を聴いていたのか、ということを残しておく必要はやはりあるなと思った次第。2019年末に異動があったことも関係はしているがそれはまぁ置いておく。

去年に比べ倍くらいCDを買っていて、外出もままならない状況で最近殆ど訪れていなかったヤフオクを訪れたらかなり気晴らしになった(けど何故か突然それすらもむなしくなりそのせいで猛烈に気分が落ち込んでしまったりもしたのだが…まぁさておき)。これまでなら、平日の休みに頑張って下北のユニオンとか行っていたのがなくなったその代わりなのだが、アクセスしやすい分加速したのかも。一方で街が動き始めて仕事帰りに一瞬ユニオンに寄ったりした時の充実感たるや。盤は買いに行くもんですよ。あらためて。
ただ、自分は自粛期間も仕事はしており劇的に時間を持て余すということもなくそこまで入手したものを聴き込めたわけではなかった。これ買えてなかったな、とか、オークションでとりあえず買っとけ、みたいなものも多くそれがダメというわけではないが振り返ってみて印象に残るようなものはわずかだった。

前置きが長くなったが。10枚上げる。

1.原マスミ/夜の幸

 

夜の幸

夜の幸

  • アーティスト:原マスミ
  • 発売日: 1988/11/25
  • メディア: CD
 

「夢ならば簡単」という曲が精神的に谷になる時が増えたけれどそんな夜の支えになった。今なら和レアリックという括りでもイケる!とか言ってる場合じゃないくらい良くて。いや、支えとか良かったとかいっていいのだろうか。何故だろうと考えた時に、あぁ、これはフォルクローレ版Walking in the Rhythmなのだ、と。或いはたまのAs for One Day。それは個人的な今の状態にリンクするものではあるが、人懐っこさと断絶(都市の孤独とも)の二面性は特殊な歌声と異国の郷愁を誘うメロディと硬質なリズムによって静かな部屋に浮遊して中々残酷な程に響いてしまったのだ。衝撃や重要性で言えば次の石原洋なのだけどそれ以上に抗えないのは自分が独りで抱えてしまった何かのせいなのだ。

2.石原洋/formula 

formula [zel-022]

formula [zel-022]

  • アーティスト:石原洋
  • 発売日: 2020/02/12
  • メディア: CD
 

バンドでもなんでもいいけど石原洋の新作は普通に待っていたのだけど、 そうではなくて何という偶然で意味を持ってしまった。長尺曲が2曲、それは誰が聴いても「問題作」と言ってしまうような、これから聴く人にはその仕組みを伝えたくはないのだけれどまぁ配慮する相手がいるわけでもなし書いてしまうが、都会の雑踏のフィールドレコーディングが全編で鳴っている。それ自体はそこまで問題ではないのだ。もしアンビエンス、SEとして鳴っているのであれば。問題はそのバランスで、その雑踏の音が一番でかい。雑踏の音を聴きながら靄の向こうを見る様に石原洋節とも言える甘美でサイケデリックな歌が現れては消えるように鳴っている。歌を聴いていいのか、どうなのか、考えながら聴くと眩暈がする。まずはそれだけで頭をガツンと殴られたような気持ちなのだが、その後都会から雑踏が消えたのだ。何という巡り合わせか、あの人のいない渋谷の街を目の当たりにして、改めてこの音楽に対峙した時に更に大きな衝撃を受けた。今自分が聴かされているこの騒めきは一体何だ、と更に眩暈がした。こんな体験は二度と出来ないだろう。

3.V.A./真説じょんがら節

 

真説じょんがら節-甦る津軽放浪藝の記憶

真説じょんがら節-甦る津軽放浪藝の記憶

  • アーティスト:Various Artists
  • 発売日: 2019/12/15
  • メディア: CD
 

https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/24401

民謡を再発見するムーヴメントにはコミットしていたいと思いアラゲホンジとか民クルとかチェックはしているがガチなものはなかなかどこから行けばいいのかわからない中でこれは度肝を抜かれた。(仕事を除いて)色んな人に聴いて欲しいと思うような音楽の聴き方選び方をしてないけれどこれは色んな人(ここでいう色んな人というのはあらゆる人ということではなく自分が知っている音楽好きな人あの人この人という)に聴いて欲しいと思った。で、寒くなり始めてから夜これを改めて聴いたら冷えて乾燥した無味乾燥の自室の空気がビリビリ震えて自分も震えた(寒くて、ではなく)。
 

4.DADA/浄

 

浄

  • アーティスト:DADA
  • 発売日: 2019/10/25
  • メディア: CD
 

きょうレコード周辺のリリースは仕事でも趣味的にもずっと追っていて、VANITY BOXのリリースの報を見た時は興奮したものだ。家人に怒られてでも買わねば、と思ったものだが結局通常の国内流通はせず実物を見ることも叶わなかった。アーント・サリーあがた森魚の乗物図鑑はもう既に持っていた、Normal BrainはスイスのWRWTFWWから単体で再発されたものが国内にも入ってきた。そしてこれはマーキーからの再発で何と宇都宮泰がリマスターを行っているという。つまりBOXとは別リマスター、あぁ、それならとこちらを入手。 その後VANITY関連で別のボックスが出るとかいう話が何度かあって、もう追い切れなくなった。疲れやすくなった。後はこのDADAを聴いて暫くはこれがあればいいと思った。宇都宮泰仕事も何だか結構色々追加されてそちらも追い切れなくなっていてなかなかしんどい状況だ。自分が本当は何が好きなのだということを見つめ直そうと努めた1年だったはずなのだけど体力が追い付いていない。やっぱり、このアルバムの生々しい雫の音を聴いて暫くはこれでいいやと思えた。

5.ANGERME/輪廻転生

 

輪廻転生~ANGERME Past, Present & Future~(通常盤)(特典なし)

輪廻転生~ANGERME Past, Present & Future~(通常盤)(特典なし)

 

アンジュルムが好きだ。何が好きかって、皆生き生きとしている。他のハローのグループがそうじゃないというわけではないが、皆が自分がありたいようにあって、お互いが尊重しあって、それをアイドルグループとしてのアイデンティティへと成しているところだ。それは和田彩花さんのアイドルとしての歩みであり、2期メンバーの臥薪嘗胆を経ての矜持だ。竹内朱莉体制になった今もそのステイトメントは引き継がれている。「あやちょのやり方」、「たけちゃんのやり方」、ということではなくアンジュルムを率いることとはということが正しく引き継がれているのだ。だから橋迫鈴さんにも先日加入した新メンバー3人もアンジュルムのメンバーとして輝いていくのであろうという希望がある。何度でも生まれ変わる。2019年にカントリーガールズが幕を閉じたがアンジュルムとして活動を続けた船木結が卒業する、しかしコロナの影響で卒業が2度延期した、前代未聞。うっすらとこのまま「やめるのやめます」的な流れにならないだろうか、と思った人も多いだろう。基本的には卒業というのはポジティヴなことだが、歌もダンスもトークも、言わばハロプロらしさの塊のような才能溢れる彼女がいなくなることが惜しく、それは活動がままならない時期の停滞感もものともしない彼女のアンジュルムのメンバーとしての姿をまだまだ見ていたい気持ちが増していったからだろう。一方でなかなかブレイクスルーできない自らと重ね合わせていたところもあるかもしれない。でも彼女は卒業していってしまった。パワフルだった。カントリーガールズよりも兼任として後からキャリアに追加されたアンジュルムの方が彼女に合っていたと自分は思う。それがアンジュルムというグループの器なのだ、生き生きとした女の子がより生き生きと輝く、だからこのタイミングでこのベストは手に入れる必要があった。


6.OORUTAICHI with SPECIAL BAND/HOTOKENO

 

HOTOKENO [OKIMI-18]

HOTOKENO [OKIMI-18]

 

https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/24837
これもコロナ禍で何度も聴いた。タイチさんの歌はどんどん純化して、優しく美しくなっていったけれどこれが到達点のように思える。例えば羅針盤の「がれきの空」や「あたらしいひと」に匹敵する美しさだと思う。こんな曲を作ってしまったら次はどうするのだろうか。

 

7.木田高介/Dog's Map & Cat's Map

www.sonymusicshop.jp
自粛期間に入った時、折角だから通販でしか買えないものを買おう、と思った。ジャックスや休みの国、溶け出したガラス箱からかぐや姫神田川のアレンジなどを手掛けた夭逝の天才が残した唯一の本人名義作品。復刻リクエスト、というクラウドファンディングじゃないけれど、ソニーのショップだけでしか買えないという難儀な再発をされている。ビー玉が散らされたような不思議なジャケット、アメリカ西海岸のプレイヤーを従え、上記のどのイメージとも違うメロウでブリージンな音はもっと手に取りやすくあるべきと今はより思うのだけど。自分はシティポップとかそういうムーヴメントは早々に傍観するようにしてしまって、嫌いじゃないけど、そんなにあれもこれも言われても、うん大丈夫ですというような感じで。これはそういう音だけれど一筋縄では行かないいわば木田高介感を持っているから、自分ならこのアルバムが一枚棚にあれば夏はOKという。


8.Avishai Cohen Big Vicious/st 

Avishai Kohen Big Vicious

Avishai Kohen Big Vicious

 

https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/25017
月光やっているのはベートーヴェンイヤーだから?と大分後になって思ったけどどうでもいいか。しかし、アヴィシャイはECM以外でのリリースはしばらくないのかね。ティグランみたいに使い分けて欲しい気持ちはある。息が詰まることが多く、沈黙の次に美しいリヴァーヴはなかなかしんどい時があるので。これは全然大丈夫なのだけれど。


 9.Ted Poor/You Already Know

You Already Know

You Already Know

  • アーティスト:Ted Poor
  • 発売日: 2020/02/21
  • メディア: CD
 

https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/25080
ジャズも大分聴き方が凝り固まって来てしまって、スキルもさることながらアイディアやクロスオーバーではなく音響で新しく聴かせたこのアルバムはそんな凝りを解してくれた。またアンドリューバードちゃんと聴かなきゃな、とか。もうジャズも新しさを感じるのが難しくなってきたと思い始めたところに新しいこともないだろうけど違う風が吹き込んだ様で嬉しかった。

 

10.蠱的態/山谷ーやられたらやりかえせ オリジナルサウンドトラック

www.anerkhot.net

大熊ワタル/篠田昌已ファンとして、ずっと欲しかったカセットがCD化。カセットはCD化して欲しい。これがタイミングとして今響くかっていうとむしろ今に始まった話ではない状況なので「今年の」という意味合いは薄かったりするけど音の重みは増すばかり。不肖まだ映画を見ていない、見に行きたい、こんな状況じゃね、ということは言いません。その前からずっと見ずに来たのだから。でも、見に行かねば。

ということでまぁ多かれ少なかれコロナ禍での音楽との生活との人生との向き合い方という意味が強いものは印象に残りやすくそういう意味でしっかりと2020年という年が反映されていると思う、新譜に拘らなかったとしても。年間ベストというのはそれでいいと思う。今そうでもないアルバムがその後重要になったとしてそれは2020年の重要作ではないのだから。

そう思いつつ、2021年は単純に内容だけで選べるようなことになって欲しい気持ちもあり。どうなるか、どうあっても音楽はちゃんと聴けていたらいいなとは思う。